グラビア印刷における版について
第3回ではグラビア印刷において使用する版(シリンダー)について書いていきたいと思います。
◆グラビア版とは
グラビア印刷に使用する版は鉄やアルミによって作られた金属ロール(ベースシリンダー)が母材となります。
そのベースシリンダーの表面にメッキ加工が施され、印刷する図柄になる “セル”と呼ばれる
小さい凹型のくぼみをつける事によって版になります。(図1参照)
【図1】
このセルにインキが入り、基材へと転写(コラム2内、図1参照)されたものが印刷物となります。
このセルの大きさや深さをそれぞれ変えることによって、基材に転写するインキ量をコントロールして
濃淡を表現することが出来ます。(図2・図3参照)
【図2】
【図3】
◆版の構成・材質
シリンダーは何層かのコーティングにより構成されており、ベースシリンダーの材質によってその構成は異なります。
下図4はベースシリンダーが鉄の場合の構成です。ベースシリンダーに、ニッケルメッキ(約2~3μ)、
銅メッキ(約100μ)、クロムメッキ(約8~10μ)という順番で構成されており、
この銅メッキの部分に実際に図柄を掘っていきます。(図4参照)
【図4】
ニッケルは母材と銅を接着する役割を持っており、
クロムはシリンダー自体の耐久性を向上させる役割を持っています。
◆製版工程
一般的な製版工程を簡潔に記載いたします。(図5参照)
実務ではデータ入稿後、青焼きにて校了が出た後に下記のような工程で製版されます。
【図5】
◆製版方式
グラビア版における製版方式には2種類あり、「レーザー製版」と「彫刻製版」があります。
----- レーザー製版 -----
レーザー製版は、薬品によって銅メッキを腐食させて図柄を形成させる方法です。
シリンダーの銅メッキ表面に感光材をコーティングし、版の凹みになる部分(インキが入る部分)を
レーザーで露光し、感光材の材質を変化させます。
その後、現像され露出した銅部分を腐食液で腐食させる事によりシリンダーの表面に図柄が形成されます。(図6参照)
レーザー製版は極小文字や複雑な図形、微細な図柄などを再現することに適しています。
【図6】
----- 彫刻製版 -----
彫刻製版は銅メッキ表面をダイモンドの針を電気信号により振幅させ、直接削り取り図柄を形成させる方法です。
1秒間に約6,000個前後のセルを形成することができ、また、セルの形状がピラミッド型になるためインキの転移率が良く、
豊かな階調表現が可能となります。
◆製版方式による再現性の違い
下図7のように、レーザー方式では滑らかな曲線が再現可能になるため、シャープな印象を与えます。
一方、彫刻方式では実際に削って図柄を形成するため、文字のエッジ部分を拡大すると
ギザギザになっていることがわかります。
【図7】
製版方法は図柄や文字によって相応しい方式が選択されることになります。
デザインによって、プロセスで表現するような色(違う色の版を重ねて表現する色)や
デザインの多様化もあり、製版に求められるレベルも年々上がってきており、
印刷会社の製版業務はその重要性が増してきています。
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